庁舎エスコ
- 庁舎エスコとは
- 自治体公共施設の象徴とも言える庁舎の施設改修にエスコ事業者を使って自らの持ち出しを減らして、コスト削減を長期間にわたり、実現していく省エネモデルです。当社団のメンバーが関わってきた自治体は約50箇所に及びますが、庁舎エスコの特徴はエネルギー削減ばかりでなく、施設の維持管理費(電話代や清掃費、薬注費用等)も包括的に削減して費用対効果を追求する事業です。
K市役所庁舎ESCO事業計画書
1.はじめに
(1)省エネ、省コストの重要性
地球環境の改善のため省エネおよびCO2の削減は社会の趨勢となっており、地方自治体は住民に率先して実行しなければならない。 又、省コストは自治体運営上、至上命題であり、これをおろそかにすると即座に債権管理団体になるおそれがある。
(2)K市役所庁舎のエネルギー使用状況および維持管理費の執行状況
K市役所庁舎は非常に省エネ意識が高く、現状の設備では省エネ率は最高水準にあると思われる。但し、設備の改善をおこなえば現状より更に省エネの進展が期待できる。維持管理については、旧来の方式が継続されており、現在の社会の状況に合わせた改革をおこなう必要がある。
(3)ESCOの導入計画
ESCOは市の財政支出を伴わないで、設備の改善をおこない、光熱水費および維持管理費の削減を行なおうとするもので、その原資は毎年支払われているエネルギー費および維持管理費である。ESCOを実施すれば、直ちに経費が削減され、ESCO期間が完了すれば更に大きく経費を削減することができる。
(4)ESCOの導入時期
K市としては市町村合併の計画もあることから、案件が決定した後にESCOの実施案を審議する。
2.ESCO対象範囲
(1)エネルギー範囲
- 全てのエネルギー
-
- 電力
- 灯油
- 都市ガス
- 上水
- 下水
(2)維持管理範囲
- 全ての維持管理費
-
- 清掃費
- ビル管理費
- 給水管理費
- 簡易専用水道検査費
- 冷暖房機運転費
- 空調維持管理費
- 冷却塔維持管理費
- 電気工作物保守・維持管理費
- 自動ドア維持管理費
- 煤煙測定費
- 防災設備維持管理費
- 警備費
- 駐車場管理費
- 電話交換業務費
- 受付案内業務費
3.ESCOの概念
概念図
概算書
事項 | 省エネ額(千円) | 省コスト額(千円) | 投資額(千円) | 備考 |
---|---|---|---|---|
1.ベース照明器具の高効率化(2) | 1,589 | – | 12,143 | 器具更新、照明制御 |
2.外灯の高効率化 | 90 | – | 366 | 安定器、管球交換 |
3.変圧器の高効率化 | 570 | – | 3,833 | 変圧器更新 |
4.デマンド制御 | 483 | – | 1,666 | ピーク電力自動制御 |
5.個別空調方式の導入(1) | 2,511 | 11,697 | 68,000 | GHPビルマルチ方式 |
6.インバーターポンプの導入 | 167 | – | 933 | 給水ポンプ更新 |
7.換気設備の運転制御 | 494 | – | 133 | 自動運転の導入 |
8.遮光・断熱シートによる省エネ | 158 | – | 984 | 外壁窓に遮光・断熱シートの貼り付け |
9.ダイアルインの導入による省コスト | – | 4,572 | 2,000 | 代表番号受付交換との併用 |
10.電気工作物保守経費の削減 | – | 4,700 | – | 単独委託 |
11.駐車場の管理経費の削減 | – | 7,027 | 3,000 | 機械管理方式に切り替え |
合計 | 6,062 | 27,996 | 93,058 | 単純投資回収2.7年 |
(削減額合計 34,058千円)
概略診断によれば、光熱水費と維持管理費を同時に削減すればエスコ事業が成立すると考えられます。概算で約9,300万円の投資に対し、約3,400万円/年のメリットが出ます。
4.ESCOのメリット
- 市としての財政支出が不要となる。
- 市役所庁舎の老朽化設備が財政支出を伴わないで最新の高効率型設備に更新できる。
- 維持管理方式を最新の設備を利用した能率のよい方式に転換できる。
- ESCO開始と同時にメリットを生み出すことができる。
- ESCO期間が完了すればさらに大きなメリットが生み出される。
- 納税者としての市民からの高い評価をうけることが出来る。
- 市の財政状況の改善に資することが出来る。
- これを契機に市の各機関のESCO導入の前例となることが出来る。
- 未だESCO導入のされていない市町村に対し指導が可能となる。
5.ESCOのフロー
6.ESCO事業日程(案)
- 事項
- 日程(案)
- 合併(案)議会上程・可決
- 平成21年7月
- ESCO(案)提出・審議・許可
- 平成21年8月
- ESCO仕様書作成業務委託契約
- 平成21年8月
- ESCO仕様書作成業務委託契約完了
- 平成21年10月
- プレスリリース
- 平成21年11月上旬
- 告示およびホームページで公開
- 平成21年11月上旬
- 募集要項配布
- 平成21年11月中旬
- 質問受付
- 平成21年11月中旬
- 説明会および質問回答
- 平成21年11月下旬
- 参加表明および資格確認書類の受付
- 平成21年11月下旬
- 提案要請書の交付
- 平成21年12月上旬
- 現場ウォークスルー調査
- 平成21年12月上旬
- 提案書の受付
- 平成22年1月上旬
- ESCO提案書に関するヒアリング
- 平成22年1月下旬
- 優秀提案の結果通知
- 平成22年1月下旬
- 合併新組織通信網の整備
- 平成22年2月上旬
- 新通信網運用開始
- 平成22年3月上旬
- 合併(予定)
- 平成22年3月下旬(予定)
- 債務負担行為設定(議会承認)
- 平成22年3月下旬(予定)
- 補助金申請
- 平成22年4月下旬
- 次年度ESCO予算化作業
- 平成22年7月(予定)
- 補助金交付決定
- 平成22年8月
- 工事期間
- 平成22年9月 ~ 平成23年2月
- ESCOサービス開始
- 平成23年3月
7.ESCO事業において準備するもの
(1)市庁舎光熱水費(平成18、19、20年度)
- 電気
- 都市ガス
- 灯油
- 上水
- 下水
(2)市庁舎維持管理費(平成18、19、20年度)
- 清掃費
- ビル管理費
- 給水管理費
- 簡易専用水道検査費
- 冷暖房機運転費
- 空調維持管理費
- 冷却塔維持管理費
- 電気工作物保守・維持管理費
- 自動ドア維持管理費
- 煤煙測定費
- 防災設備維持管理費
- 警備費
- 駐車場管理費
- 電話交換業務費
- 受付案内業務費
(3)市庁舎管理用図面
- 建築関係図面
- 電気関係図面
- 空調関係図面
- 衛生関係図面
(4)市庁舎設計図書
- 建築構造計算書
- 空調負荷計算書
(5)一般図書
- 建築設備設計計算書作成の手引(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築工事標準仕様書-電気設備工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築工事標準仕様書-機械設備工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築工事標準仕様書-建築工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築改修工事標準仕様書-電気設備工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築改修工事標準仕様書-機械設備工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築改修工事標準仕様書-建築工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築工事標準図-電気設備工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 公共建築工事標準図-機械設備工事編(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 電気設備工事監理指針(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 機械設備工事監理指針(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
- 建築工事監理指針(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
8.ESCO事業者の選定
(1)選定のフロー
(2)選定委員
市職員 若干名
外部委員 若干名
(3)選定委員の業務
- ESCO事業計画の策定
- ESCO事業仕様書の認可
- ESCO事業者の選定
- ESCO事業完了の確認
- ESCOサービスの確認
9.ESCO事業者の選定基準
(1)選定事業者数
最優秀提案者 1社
優秀提案者 1社
(2)選定のカテゴリー
- 技術提案内容
- 維持管理提案内容
- 計測・検証手法
- 運転管理指針の内容
(3)選定重点項目
- 工事費相当額が安いこと。
- ESCOサービス料が安いこと。
- ESCO回収率が高いこと。
- 技術提案に具体性・妥当性があること。
- 二酸化炭素排出の削減効果が高いこと。
- NOX,SOX、ばいじん、騒音等についての環境性が配慮されていること。
- 光熱水費、維持管理費の削減補償額が高いこと。
- 経営者の経営状況が信頼できること。
- 維持管理、計測、検証方法および運転管理指針に具体性・妥当性があること。
- 適切な管理を行い、期限までに確実に完了し、市に引渡しが出来ること。
10.ESCO提案におけるエネルギーおよびCO2算出基準
エネルギーの算出基準 関東経済産業局ホームページ(最新版)
CO2の算出基準 関東経済産業局ホームページ(最新版)
11.予想されるリスクと責任分担
表(2-1)
【共通】
リスクの種類 | リスクの内容 | 負担者 | |
市 | ESCO | ||
応募要領の誤り | 応募要領の記載事項に重大な誤りがあるもの | ○ | |
ESCO提案の誤り | ESCO提案の低減が達成できない場合 | ○ | |
第三者賠償 | 調査・工事による騒音・振動等による場合 | ○ | |
安全性の確保 | 設計・建設・維持管理における安全性の確保 | ○ | |
環境の保全 | 設計・建設・維持管理における環境の保全 | ○ | |
保険 | 設備の設計・建設における履行保証保険および維持管理機関のリスク保証する保険 | ○ | |
事業の中止 ・延期 |
市の指示、議会の不承認によるもの | ○ | |
施設建設に必要な許可等の遅延によるもの | ○ | ||
事業者の事業放棄、破綻によるもの | ○ | ||
不可抗力 | 天災等による設計変更・中止・延期 | ○ | ○ |
【計画・設計段階】
物価 | 急激なインフレ・デフレ (設計費に対して影響のあるもののみを対象とする) |
○ | ○ |
設計変更 | 市の提示条件、指示の不備によるもの | ○ | |
ESCO事業者の指示・判断の不備によるもの | ○ | ||
応募コスト | 応募コストの負担 | ○ | |
資金調達 | 必要な資金の確保に関すること | ○ |
【建設段階】
不可抗力 | 天災等による設計変更・中止・延期 | ○ | ○ |
物価 | 急激なインフレ・デフレ | ○ | ○ |
用地の確保 | 資材置き場の確保 | ○ | |
設計変更 | 市の提示条件、指示の不備によるもの | ○ | |
ESCO事業者の指示・判断の不備によるもの | ○ | ||
工事遅延 ・未完工 |
工事遅延・未完工による引渡しの遅延 | ○ | |
工事費増大 | 市の指示・承認による工事費の増大 | ○ | |
ESCO事業者の指示・判断の不備によるもの | ○ |
表(2-2)
【建設段階】
リスクの種類 | リスクの内容 | 負担者 | |
市 | ESCO | ||
性能 | 要求仕様不適合 (施工不良を含む) |
○ | |
一般的損害 | 引渡し前に工事目的物等に関して生じた損害 | ○ |
【支払関連】
支払遅延 ・不能 |
支払遅延・不能によるもの | ○ | |
瑕疵担保 | 隠れた瑕疵の担保責任 | ○ |
【維持管理関係】
計画変更 | 用途の変更等、市の責めによる事業内容の変更 | ○ | |
維持管理費の上昇 | 上記以外の要因による維持管理費のの増大 | ○ | |
施設損傷 | 工事中に係る事故・火災による市施設の損傷 | ○ | |
工事中に起因する市施設への障害 | ○ | ||
上記以外の事故・火災による市施設の損傷 | ○ |
【ベースライン調整】
機器の不良 | ESCO機器が所定の性能を達成しない場合 | ○ | |
光熱水費単価 | 光熱水費単価の変動 | ○ | |
エネルギー消費量 | 機器の使用状況、稼働率の顕著な変動や運転管理方法の顕著な変更 | ○ | |
上記以外の変動要因の場合 | ○ | ○ |
【保証関係】
性能 | 要求様式不適合(施工不良を含む) | ○ | |
使用不適合による施設・設備への損害、市施設運営・業務への障害 | ○ |
12.ESCO事業実施に向けた今後の作業
- エネルギー使用にかかる詳細な診断
- 維持管理費の支出内訳と実態
- 改修工事費の概算額算定
- ESCO事業基本計画書の策定
- ESCO公募要領の作成
- ESCO公募にかかる標準様式の作成
- ESCO事業契約書(案)の作成
13.ESCO事業実施による省エネ、省コスト事例 (推定)
省エネ、省コスト事例
- 【個別空調方式の導入】
-
- 空調方式が個別になるため、必要箇所のみ、必要時間のみの空調が可能となり、空調エネルギーを25%削減(推定)することが可能となる。
- 現状の冷暖房機運転経費が不要となる。
- 現状の空調維持管理費(空調機フイルターメンテ等を除く)が不要となる。
- 現状の冷却塔維持管理費が不要となる。
- 現状の煤煙測定費が不要となる。
- 【電話交換方式にダイヤルイン方式の追加導入とビジネスフォン化】
-
- 受信回数の内、直接担当部署に直接入る率が増加するにつれ電話交換業務の負荷が軽減され、人件費を削減することが可能となる。
- ダイヤルイン番号は市のホームページ等で周知するが、代表番号しか知らない。人に対しては従前どおり交換手が受け付ける。この場合、特定の部署のみに用件のある人に対しては交換する時点で次回から直接かけることが出来るようにダイヤルイン番号を知らせれば、徐々に代表にかかる数は減少する。
- 直接担当部署にダイヤルイン出来ることは高度な行政サービスの提供となる。
- ビジネスフォンを使用することにより、転送がワンタッチボタンにより可能となり、又、内線相互の接続も頻繁に交信する部署毎の間ではワンタッチボタンによる交信が可能となり行政事務の効率化を図ることが出来る。
- ビジネスフォンは資格を必要としないため、最終的に庁舎受付業務と電話交換業務をコラボレイトすることにより経費の大幅な削減が可能となる。
- 本システムを財政支出を伴わないで、平成22年2月より運開させ、合併機関もこのシステムに取り込むことにより市に電話をかけた人は再電話をすることなく合併機関に転送することが出来る。
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